「偏見」
です。
インドを貧乏旅行していた日本人の若者が、ある日、泊まっていた安宿の主人に、
「ウチの宿泊客のカップルが、ダチュラ入りのバング・ラッシーを飲んじゃったみたいで、いま病院なんだけど、泊まりになりそうだから、付き添いで一緒に泊まってあげて欲しい。インド人が信用出来なくなってて、自分ではダメだから」
..と相談を受けたそうです。
「自分ではダメだから」の部分を気分を害するふうでもなく言う主人の態度に崇高なものを感じたこともあって、彼は付き添いを引き受けた。
病院のベッドには、白人のカップルが昏睡中だった。彼はバッド・トリップの苦しさを知らないわけではなかったので、カップルに同情し、病院から借りた毛布を石の床に敷いて寝た。
翌朝、目を覚ました白人カップルに、彼は「大変だったね」というようなコトバをかけましたが、カップルの態度は思いのほか冷たく、見ず知らずの自分が一晩付き添ったことへの感謝の言葉もなかった。
実は、彼はこの時、そのカップルから、
「有色人種はみんな信用出来ない」
的なオーラを感じた気がして、不快な気持ちになりました。
いまでも彼は、その時の自分を深く恥じています。彼が不快感を感じたのは「自分をインド人と一緒にするな」という気持ちがあったからです。
〈解説〉
・バング・ラッシー... 大麻粉末入り飲むヨーグルト。
・ダチュラ... 朝鮮アサガオから抽出する向精神物質。
・ダチュラ入りのバング・ラッシー... バング・ラッシー自体は以前からバラナシの名物であったが、大麻以外の麻薬を混ぜた粗悪品が一時横行した。なかでもダチュラはしゃれにならない。
7.30 ghost writer